G20財務相会議「世界経済は下向き」 共同声明を採択 – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA13BOA0T11C23A0000000/
保存日: 2023/10/14 8:09

鈴木俊一財務相(中央)と植田和男・日銀総裁(左)はG20会議後に記者会見を開いた(13日、マラケシュ)

【マラケシュ=スレヴィン大浜華】20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は13日、モロッコ中部のマラケシュで閉幕した。共同声明は地政学的な緊張などに触れ「世界経済のリスクバランスは引き続き下方に傾いている」と総括した。
2022年2月以来、7会合ぶりに共同声明を採択した。イスラム組織ハマスのイスラエル攻撃については言及しなかった。12日の主要7カ国(G7)会議は「テロ攻撃を断固として非難する」としたが、G20にはサウジアラビアやロシアなど米欧と異なる立場の国が参加している。
鈴木俊一財務相は閉幕後に記者会見し、会議場で「深刻な憂慮を表明した」と明かした。声明に入らなかった理由について財務省の神田真人財務官は「何カ国かが非難の発言をしたが、議論の中心ではなかった」とのみ説明した。
経済の下押しリスクは高まっている。インドのシタラマン財務相は閉幕後の記者会見で「中東危機は多くの国が懸念し、表明もしている」と話した。「燃料価格の高騰やサプライチェーン(供給網)の分断が目下の懸念材料だ」とも語った。
ロシアによるウクライナ侵攻をめぐる表現は9月にニューデリーで開いたサミット(首脳会議)の共同声明を踏襲した。「世界中の戦争や紛争による甚大な人的被害と悪影響を深く懸念している」とした上で「今日の時代に戦争はあってはならない」と強調した。
「すべての国は領土取得を追求するための武力による威嚇または武力の行使は慎まなければならない」とした国連憲章の順守を求めた。「核兵器の使用またはその威嚇は許されない」とも記した。
一方でロシアへの直接の非難は避けた。前回7月の財務相会議はロシアの反対で共同声明はまとめられなかった半面、議長総括として「ほとんどの G20 メンバーは、ウクライナにおける戦争を強く非難」したとの文言を盛り込んでいた。

財務相会議は地政学的な問題や安全保障を議論する場ではないと認めつつ「これらの問題は世界経済に重大な影響を与え得る」との認識を共有した。
具体的には「グローバルな食料およびエネルギー安全保障、サプライチェーン(供給網)、金融の安定性、インフレおよび成長」といった悪影響が生じていると強調した。
世界経済の強靱(きょうじん)性に触れた一方で「見通しは低位にとどまり不均一でますます分極化している」との懸念を示した。