SEC委員長「仮想通貨は法令違反横行」 米下院公聴会 – 日本経済新聞
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN190FI0Z10C23A4000000/
保存日: 2023/04/19 8:03
18日、公聴会に臨むSECのゲンスラー委員長(ワシントン)=AP
【ニューヨーク=竹内弘文】米下院金融サービス委員会は18日、米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長を招き、暗号資産(仮想通貨)や気候変動リスク開示に関する公聴会を開いた。ゲンスラー氏は「仮想通貨ほど法令順守を欠く分野はない」と述べ、脱法的な仮想通貨ビジネスの摘発を続ける姿勢を示した。野党共和党は反ビジネス的だと非難した。
米連邦政府レベルで仮想通貨に対する包括的な規制は存在しない。仮想通貨の法的位置づけを巡る係争も続いているが、SECはほとんどの仮想通貨は米証券法の規制対象である「有価証券」に該当するという立場だ。
2022年11月に大手交換業FTXトレーディングが経営破綻して以降、SECは仮想通貨関連の摘発を加速している。仮想通貨を用いた詐欺案件に加え、顧客から預かった仮想通貨に利回りを付けるサービスなども摘発対象としている。
ゲンスラー氏は仮想通貨業界を「法令順守違反が事業モデルとして確立している分野だ」と述べ、「仮想通貨のエコシステムには、SECのような『警察官』が必要だと思う」とも主張した。
下院多数を握る共和党の議員は責め立てた。マクヘンリー委員長は「イノベーションを海外に追いやり、米国の競争力を低下させる」と指摘した。トム・エマー議員は「『無能な警察官』は米国民を守らず、むしろ米企業を国外に追いやって中国の手に渡らせている」とも批判した。仮想通貨の締め付けを強化する米国と対照的に、香港は規制緩和で仮想通貨ビジネスのハブを目指している。
民主党議員からも「規制の緩い海外取引所ではなく、米コインベースのような米国内の取引所を締め付けるのは(バハマ本社の)FTX破綻から学んだ教訓を無視した動きだ」(リッチー・トーレス議員)といった指摘があった。
SECが22年3月に提示した、上場企業に気候変動リスクの情報開示の充実を求める規則案もやり玉にあがった。ブレイン・ルートゥクマイヤー議員(共和党)は「ESG(環境・社会・企業統治)を推進しているが、SECの権限の範囲外だ」とくぎを刺した。
ゲンスラー氏は「何十兆ドルもの資産を運用する多くの投資家が、投資判断において(気候変動リスクが)重要だと考えている」と述べ、開示充実は潮流にそうものだと主張した。その上で「私たちは気候規制当局でない。(気候政策に)中立的な立場だ」とも訴えた。
SECは23年4月中にも最終規則案をまとめて公表する方向だったが、共和党の激しい反対もあり作業が遅れているとされる。特に問題になっているのが「スコープ3」と呼ばれる、サプライチェーン(供給網)全体に関わる温暖化ガス排出量だ。
ゲンスラー氏は3月に米CNBCのインタビューで、スコープ3の算出方法について「うまくできあがっていない」と進捗が芳しくないことを認め、開示対象の縮小を示唆していた。