米国のレジェンド投資家から大化け株発掘の極意を学ぶ – 日本経済新聞
作成者:
ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB202FL0Q3A320C2000000/
保存日: 2023/03/23 8:22

写真はイメージ=PIXTA

相場に連れ安して有望株も大きく値下がりする局面は、大化け株の卵を仕込むチャンスでもある。株価が買値の10倍以上に値上がりする「10倍株」――。その候補を発掘するノウハウを5回の短期集中連載で紹介する。2回目となる今回は、大化け株を発掘する投資術で歴史に名を残すレベルの成果を上げた、3人のレジェンド投資家の著書から学んでいく。
• 【第1回】資産2.6億円の会社員投資家 少子高齢化の関連株に照準
世界の著名投資家たちからは、国や時代が変わっても色あせない投資の成功法則を学べる。ここでは、成長株の大化けを狙う手法で知られる3人のレジェンド投資家の著書から学んでいこう。

個人だからプロに勝てる――ピーター・リンチ

米資産運用大手フィデリティの元ファンドマネジャーとして華々しい成果を上げ、「テンバガー(10倍株)」という言葉を広めた存在でもあるピーター・リンチは、アマチュアの個人投資家「だからこそ」大化け株が発掘できると説く。消費者や業界人としてならその成長性に気付けるが、証券業界のプロには気付きにくい企業が多いという意味だ。

面白いのは、彼が好む「完璧な株」の条件の一つに「無成長産業」を挙げていることだ。業界全体が急成長している分野は新規参入を招いてレッドオーシャン化しやすく、注目度の低い業界で独り勝ちを続ける企業の方が成長の確度が高いと理解すればいい。ごみ処理や葬儀会社といった、目を背けられやすい業界も好む。証券業界のアナリストが注目する前に買うことができれば最高だという。

「いい会社」だけでは不十分――ウィリアム・オニール

企業の成長性が高いだけでは大化け株として不十分で、株価チャートの形にも目を配るべしとレジェンドは説く。彼らが特に好むのは新高値、特に上場来高値を更新した銘柄だ。安くなった銘柄ではなく、既に大きく上昇している銘柄こそが、その後の大化けにつながりやすいという。
米国の代表的投資家の一人であるウィリアム・オニールは、買うべき成長株の条件を体系化した「CAN-SLIM法」を提唱。その著書でも冒頭で多くのページを割いたのがチャートの読み方だ。

理想的なチャート形状の一つが「カップウィズハンドル(取っ手付きカップ)」。一度大きく上昇した後に、U字形で浅めの調整を経て、売買高の増加を伴って高値を更新した銘柄だ。この調整期間に腰の定まらない投資家がふるい落とされた上で、機関投資家の買い集めの進展が示唆されるためだ。

下げ相場中に先導株を探す――マーク・ミネルヴィニ

米国の伝説的トレーダー、マーク・ミネルヴィニは、リンチやオニールの手法も踏まえて独自に体系化した「SEPAトレード法」を説く。彼もチャートの形状を重視し、成長株のチャートは4つのステージを経ると理論化した。

売買が細り、値動きも横ばいを続ける「ステージ1」から、売買高の増加を伴って上昇を始める「ステージ2」に移行する時が買いタイミングとして、ステージの転換を見極めるための具体的な基準も解説している。「上昇時に売買高が増え、下落時は売買が細る」状況が買いの条件で、逆に下落時に売買高が増えたら大口投資家の売り抜けを示唆する危険信号だ。
下げ相場から反転する際に最初に上がり出す「先導株」を重視し、先導株の同業だが割安に放置された出遅れ株を評価しない点でもオニールとミネルヴィニは共通する。全体相場の下げの最中から幅広い銘柄をウオッチし、先導株の反転上昇にいち早く気付くことが勝利への道かもしれない(文中敬称略)。

(臼田正彦)
[日経マネー2023年5月号の記事を再構成]
【関連記事】
• ・SVB破綻の影響が「局所的」だと考える理由
• ・長期投資で企業を応援するということ(澤上篤人)