JPモルガンCEO「6~9カ月後に米景気後退も」(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN103QC0Q2A011C2000000/
保存日: 2022/10/11 7:37

JPモルガンのダイモンCEOは米株相場がさらに2割下げるリスクにも言及(9月、ワシントン)=ロイター

【ニューヨーク=斉藤雄太】米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は10日の米CNBCのインタビューで「米国や世界は今から6~9カ月後にある種の景気後退に追い込まれる可能性がある」と語った。止まらぬインフレや世界的な金利の急上昇、ウクライナ危機などが重なる現状を「非常に深刻な事態だ」と指摘し、市場のさらなる混乱にも警戒を呼びかけた。
ダイモン氏は米国の消費者や企業の財務状態はなお健全との見方を示し「米経済はまだうまくいっている」と指摘した。そのうえで将来的に起こりうる景気後退については「非常に穏やかなものからかなり厳しいものまで考えられる」として、ロシアのウクライナ侵攻の行方次第で経済のシナリオも大きく変わるとの認識を示した。
急速利上げに動く米連邦準備理事会(FRB)の金融政策については「(金融緩和から引き締めに転じるまで)あまりに長く待ちすぎ、量的引き締め(QT)も早く始めるべきだった」と指摘した。「ただFRBは明らかに(インフレ退治の政策対応が)追いついてきている」とも述べ、「経済を十分に減速させることに成功するよう祈り、見守るしかない」と語った。
経済の冷え込みがどの程度進むのか読み切れないなか、「一つ保証できるのは市場が不安定になることだ」と述べた。すでに新規株式公開(IPO)や低格付け高利回りのハイイールド債の取引が停滞していると指摘したうえで「より大きな亀裂が入り、パニックに陥るかもしれないのはクレジット市場だ」とみる。
米株相場についても慎重な見通しを示した。すでに昨年末から2割以上下落しているS&P500種株価指数がまだ底値をつけていない可能性を示唆し、景気シナリオ次第で「さらに20%下がりうる」と指摘した。
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• ひとこと解説「米国や世界は今から6~9カ月後にある種の景気後退に追い込まれる可能性がある」という発言は、エコノミストの多数意見やIMF(国際通貨基金)の見解とも重なり合う。FRBが急速に金融引き締めを行っており、それがドル高や他の国々の利上げにもつながっているため、途上国を中心に世界経済へのダメージは大きくなりやすい。しかし、マーケットが問題にしているのは、米経済が定義として「リセッション(景気後退)」にあてはまるかどうかではなく、リセッションと定義される可能性がある景気の悪化がどこまで深く、どの程度長いのかという点。雇用情勢が底堅く推移し持ちこたえるのであれば、FRBの利下げへの早期転換は起こりにくい。