22年後半に大相場が到来する 相場の生き字引が大胆予測
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0276K0S2A500C2000000/
保存日: 2022/05/11 17:43
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日本株相場をウオッチし続けてきた株式評論家の植木靖男さん。大相場の到来を予測する

ロシアのウクライナ侵攻や円安の進展でインフレに拍車がかかり、相場の先行きに対する不確実性も増して、日本株相場は不安定な展開が続いている。今後の見通しを株式投資のプロに聞いた。トップバッターは、オイルショックの前から半世紀以上にわたって市場を見守り続けてきた株式評論家の植木靖男さん。相場の御意見番は、これから大相場が到来すると予測する。
――不安定な相場が続いています。この状態はまだ続きそうですか。
続くでしょう。米国の金利上昇やロシアによるウクライナ侵攻などのリスクをまだ全ては織り込んでいません。3月に日経平均株価が2万5000円を割り込みましたが、もう一度下げると思います。米国のQT(量的引き締め)を嫌気して、再び2万5000円近辺まで下げるかもしれません。
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インフレと円安が重なって株高に

――またですか。
そうがっかりせず、歴史的な見地から話しましょう。私は2022年後半から24年にかけて、大相場が来ると予想しています。この前の大相場は1986年に始まった昭和・平成バブルでした。過去の例を見ると、大相場の前は非常に苦しい時を迎えるのが常です。例えば昭和・平成バブルの前は、3年間で為替相場が1ドル=100円以上の円高・ドル安になりました。「これで日本経済は終わりだ」とまでいわれたものです。

遡ると、大正元年頃の諒闇(りょうあん=喪に服すの意味)不況の例があります。日清・日露戦争で日本経済が疲弊し、貧困のどん底にあった頃です。明治天皇が崩御した後の不況のため、諒闇不況と呼ばれました。しかし大正3年(1914年)に第1次世界大戦が勃発。欧州が戦禍にある間、日本は欧州企業の商圏に進出して景気が回復し、株価も上昇しました。
昭和25年(1950年)には朝鮮戦争で景気が回復しました。その直前といえば、第2次世界大戦で日本が焼け野原になった頃です。
――上昇相場の前はいずれも苦しい時が来る、と。
そうです。不思議なことに、大相場が来る前は、必ず海運株が上がります。上昇する理由は時代により違いますが、今回も海運株が上昇しているでしょう。不安定な相場は大相場前の苦しい時期で、この後、大相場が来ると思います。そして上昇は3年続くのが通例です。だから22年の後半から24年にかけて大相場になると思います。
――3年も続きますか?
経済状況を踏まえて話しましょう。大正時代や朝鮮戦争時の大相場では、インフレが進みました。昭和・平成バブルでは資産価格は大幅に上昇しましたが、物価全般は大きく上昇してはいません。それは直前に円高・ドル安が進んだためです。100円も円高になれば物価を押し下げる。さらに円高対策で金融が緩和され、余ったお金が株と不動産に集中し資産インフレを引き起こしました。
今回は足元でインフレが進みつつあり、大正時代や朝鮮戦争時と環境が似てきました。しかも、昭和・平成バブル時とは違って円安です。この条件がそろえば株高になりやすいはずです。

「換物思想」でインフレが加速

――賃金が上がらない状態での悪いインフレかもしれません。
私は賃金も上がると思います。今年の春闘では定期昇給とベースアップで賃上げ率が2%を上回る例がありました。そしてインフレになると「換物思想」が生じます。
――換物思想?

インフレ下では物の値段が時間とともに上がるので、早めにお金を物に換えようと思い始めます。これが換物思想。そうなると物が売れてインフレが加速します。
――インフレ加速なら、日銀も金融引き締めに転じるのでは?
日銀は利上げに動けるでしょうか。保有国債が521兆円あり、ここで金利を上げたら自分の首を絞めるようなものです。先日、岸田文雄首相は物価高対策を閣僚に指示しました。これは本来、日銀の仕事です。日銀が利上げに動けなくなっている証しと見ることもできます。
――そうなると日米金利差は拡大して、ますます円安ですか。
今以上の水準に円安が進むでしょうね。このように昭和・平成バブルとは違って、円安・インフレが進む時代がやって来る。そのため大相場が来ると思っています。
(佐藤由紀子)
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