もはや「第3次オイルショック」 今後のシナリオは(写真=AP)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC184G60Y2A310C2000000/
保存日: 2022/03/23 8:03
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ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに商品市況(コモディティー・マーケット)が大荒れだ。特に原油価格(北海ブレント先物価格)は3月上旬に一時約14年ぶりの水準まで高騰。貴金属や穀物でも価格の高騰が目立つ。幅広い資源を輸入に頼る日本企業、さらに消費者にとっても影響は大きい。

今後のシナリオをどう考えればよいのか。企業向けに価格リスクのコンサルティングを手掛けるマーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘共同代表に聞いた。
――原油価格(北海ブレント先物価格)が3月上旬に一時1バレル100ドルを大きく上回りました。いったい何が起きているのでしょうか。
「一大産油国であるロシアからの供給が途絶するという、想定していなかった可能性が高まったことによるものです。つまり、需要が増加して価格が上昇するわけではありません。現物を調達できなくなるリスクを意識した実需や、受け渡す現物を保有しない投機の買い戻しが急速に入り、大幅な上昇となりました」

ウクライナ危機をきっかけに、原油価格は大幅に上昇=AP

「過去のオイルショックでは、大きな生産力を持ち、外貨獲得手段として輸出する動機もあった産油国が、イスラエル陣営への供給を止めると決めたのが主因でした。いわばイデオロギーが経済合理性を上回った状況が起きたのです。その後、中東への原油依存が大きなリスクと意識され、石炭や原子力へのシフト、自国内での増産が起きました」
「こうした供給・調達構造を、エネルギー安全保障上、変化させる必要が出てきたという意味で、今回は『第3次オイルショック』といえるのではないでしょうか」

「今後の価格は、短期的には戦況次第で大きく変わります。ロシアへの経済制裁をどこまで強めるかによって、供給が絞られるかどうかが変わりますし、逆にロシア側が反撃として供給を止めるかもしれません。足元(3月15日時点)は、『急に禁輸措置などの制裁は難しい』という見方から落ち着いていますが、今後は上にも下にも価格は大きく振れる可能性があります」
――どんなシナリオを想定すべきでしょうか。
「まずベースになるのは、供給不安から100ドル超の水準が当面続いたとしても、資源価格の上昇や、これとは別に進んでいる各国の金融引き締めの影響で景気が減速し、年後半には(ロシアによるウクライナ侵攻前の)80ドル前後まで落ちるシナリオです」
「中長期的には、欧州連合(EU)を中心にした脱炭素の運動は継続しますが、再生可能エネルギーは異常気象が発生した場合に期待した稼働ができないことが分かってきました。エネルギー源として原子力などの選択肢もあるとはいえ、技術的にすぐ使える燃料として移行期間に石油やガスは必要になります」
「しかし、油田開発は最も早い米国でも6カ月~1年はかかります。すると、供給は逼迫し原油価格は高いままということもあり得ます。この場合、ウクライナ侵攻直前の90ドルが目安になるでしょう」

特定の国・地域に依存するリスクが顕在化

「過去のオイルショック後に起きたのは、世界中が石油の代わりのエネルギー源として、石炭・天然ガス・原子力などの多様化にかじを切ったことによる供給過剰と原油価格の長期低迷でした。この経験則を考慮して、産油国側が増産を進めなかったり、民間の開発投資が進まなかったりする可能性もあります。いずれにしても、脱炭素の大方針を維持するのかどうかが、原油価格の行方を大きく左右しそうです」
「再生可能エネルギーも問題がないわけではありません。例えば太陽光パネルや風力発電で大きなシェアを握るのが中国であることです。今回のロシアの件で明らかになったのは、1つの国や地域に調達を依存するのはリスクだということ。中国に限らず特定の国や地域に依存する脱炭素は安全保障の観点から持続可能なのかという議論も出てくるでしょう。当面はクリーンな石炭火力発電を導入するという見直しが起きる可能性もあります」
「企業にとっては制約条件が一気に増えてしまいました。あらゆるリスクを想定して、サプライチェーンを大きく見直さないといけない状況です。単純なグローバリゼーションを背景にした『安いところから買えばいい』では通用せず、今まで以上にカントリーリスクや価格変動リスクを認識しないといけません。物流コストも余計にかかってくるでしょう」
――2022年のリスク要素として注目しているのは。
「金融市場の観点から言えば、米国など主要国の金融緩和正常化の行方や影響がどうなるかです。また、秋には中国で習近平氏の3期目がスタートする公算が大きいです。中ロ関係に変化があるようだと、企業にとっても考え方を見直さなければならなくなるかもしれません」
(日経ビジネス 三田敬大)
[日経ビジネス電子版 2022年3月17日の記事を再構成]

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