もしかして欠陥住宅? 購入後の住宅トラブル、どう対応
作成者:
ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOMH14BVN0U2A210C2000000/
保存日: 2022/02/21 7:48
いいえ
中古住宅の購入前に水漏れのしみなどはチェックしたい
新築住宅ならば、売り主となる不動産会社や建築会社は、住宅の主要構造部分や雨水の浸入を防止する部分の設計ミスや施工ミスによる欠陥に関して、10年間の保証責任を負うことが義務付けられています。さらに、売り主や建築会社が保証期間中に破綻したとしても問題ないよう、住宅瑕疵(かし)担保責任保険への加入も義務付けられています。
一方、個人間で取引される中古住宅については、既存住宅売買瑕疵保険に加入すれば、構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分などの修補の費用を賄うことができます。しかし、保険の基準を満たせる中古住宅が少ないうえ、保険料に加え基準を満たすための費用負担も必要なことなどから、保険加入済みの中古住宅はあまり流通していません。
中古住宅のほとんどが保険に加入していないという状況のもと、私たちは買った後に建物の不具合を発見した場合、どうしたらよいのでしょうか。
不具合に関する一般的な売買契約条項は
民法では、引き渡された目的物の品質等が契約の内容に適合しない場合、売り主が買い主に対して契約の内容に適合するものを引き渡すなどの責任(契約不適合責任)を負わねばならないとしています。ただし、契約当事者が合意すれば、この規定を緩めるなどの特約を有効にすることができます(売り主が不動産会社などの場合は別の法律で規制されています)。
こうしたことから、個人間で取引される中古住宅売買契約書には、購入した建物に不具合があった場合の特約が記載されています。建物について①雨水の浸入を防止する部分の雨漏り②建物の構造耐力上主要な部分の腐食③シロアリの害④給排水管・排水桝(ます)の故障があった場合、引渡完了日から3カ月以内に通知を受けたものにかぎり、売り主はその部分について修補する責任を負う――といった特約が一般的となっています。
3カ月というのは不動産取引慣行であり、1カ月としているケースもまれにあるようです。また、築年数がかなり古い建物などを取引する場合は、売り主が修補する責任について免責にするというケースもあります。
万が一問題を発見したら
購入した後に、建物に不具合や判断がつきにくい問題箇所などを発見したら、仲介業者に連絡して現地に来てもらいます。仲介業者が状況を確認し、売り主に修補を請求できるものと判断すれば、仲介業者は売り主とすぐに交渉してくれます。
問題は、現地を確認した仲介業者が建物の不具合状態を的確に判断できない場合です。筆者がかつて買い主側に立って仲介した事案のお話ですが、契約前に現地を確認した際、天井脇の壁紙にひどい水じみ痕があったため雨漏りを疑ったのですが、売り主と売り主側の仲介業者は結露だと強く主張し、やむなくそのまま契約したことがあります。そこで引き渡し日当日に現地で水じみのある部分を解体し雨漏りであることを突き止め、売り主に修補費用の負担をしてもらったという経験があります。
仲介業者が判断できないときは
このケースは、筆者に住宅診断(ホームインスペクション)の経験があったため判断ができたわけですが、仲介業者によってはその判断ができない場合もあります。仲介業者が売り主に請求できる事象なのか判断できそうにない場合は、工務店や建物調査会社を手配し、状況をチェックしてもらったほうがよいと思います。3カ月はあっという間ですから、その期間が経過する前に、売り主が修補すべき事象なのかどうかをはっきりさせることが重要になります。
売り主に資力がない場合も
引き渡し後に売り主が修補すべき不具合が見つかっても、売り主に資力がなく修補負担をしてもらえないということもないわけではありません。これを回避したいなら、契約前に専門家にチェックしてもらった上で契約するのがベストではあります。しかし、売り主や仲介業者が許可してくれない場合もあります。
残代金支払日の1週間前くらいに現地を再度見せてもらって、各種設備がきちんと動くかどうかをチェックすることがよくありますが、その際に各部屋の天井をよく見て雨漏りの痕がないか、床下点検口をのぞいて水漏れの痕がないかなど、仲介業者と一緒に見てみるとよいと思います。残金支払い前に売り主が修補すべき事象が見つかれば、売買代金を減額するなどの交渉も可能になります。
田中歩(たなか・あゆみ)
1991年三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行。企業不動産・相続不動産コンサルティングなどを切り口に不動産売買・活用・ファイナンスなどの業務に17年間従事。その後独立し、「あゆみリアルティーサービス」を設立。不動産・相続コンサルティングを軸にした仲介サービスを提供。2014年11月から個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクションなどのサービスを提供する「さくら事務所」にも参画。