ロス自動車ショー開幕へ 大手は存在薄、新興EVが脚光
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN161BI0W1A111C2000000/
保存日: 2021/11/17 7:55
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【ロサンゼルス=白石武志、中山修志】米国で19日に一般公開されるロサンゼルス自動車ショーのメディア向け発表会が17日に始まる。新型コロナウイルスの感染拡大後、約2年ぶりに米国で開かれる主要自動車ショーとなるが、日米欧の大手メーカーの存在感は薄い。入れ替わるように露出を増やすのが新興の電気自動車(EV)メーカーだ。

ホンダは不参加、トヨタも展示のみ

ロス自動車ショーは100年を超える歴史をもち、高級車の祭典として知られる。前回2019年には、米フォード・モーターが同社初のEV「マスタング・マッハE」を出展したほか、トヨタ自動車が主力の多目的スポーツ車(SUV)「RAV4」のプラグインハイブリッド車(PHV)を初公開。全米最大の自動車市場であるカリフォルニア州の消費者にアピールしようと、大手がこぞって目玉を用意する舞台となっていた。
新型コロナ禍で状況は様変わりした。各社は新車投入にあわせて全世界に情報を発信しやすいオンラインイベントを重視。ホンダは「新型コロナ危機下につき、新車発表はオンラインで自前で行う」として早々にロスショーへの参加を見送ったほか、トヨタもブース展示のみで新車発表などはしない予定だ。今回のショーで新型車やコンセプト車を発表する大手メーカーは韓国・現代自動車など一部にとどまる。

新興EV脚光、新旧交代を象徴

入れ替わるように存在感を高めるのが、特別買収目的会社(SPAC)との合併により上場し資金力を高めた新興EV企業だ。

20年にSPAC上場しEVの生産委託で台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業などと提携した米フィスカーは今回、SUV型のEV「オーシャン」の市販モデルを披露する。SPACとの合併で11月に米ナスダック市場への上場を果たしたばかりの米ミュレンテクノロジーズも新型EV「ファイブ」を世界初公開する。
カリフォルニア州は全米に先駆け、州内におけるガソリン車の新車販売を35年までに禁止すると表明しており、第2、第3のテスラを狙うSPAC上場組にとってはアピールする格好の機会になる。28日まで続く今回のロス自動車ショーは、EVを巡りプレーヤーの新陳代謝を象徴する場になる可能性がある。

旧来型の自動車ショー、転機に

EVブームの追い風はあったものの、主催者側は出展社集めに苦戦したようだ。17~18日に開かれるプレスデーのうち、参加する企業の発表予定が設定されたのは17日のみ。記者会見を予定する約10社の中にはEV事業で海外展開を狙うベトナム複合企業最大手ビングループといった新顔も目立つ。
例年1月に開催される世界最大のデジタル技術見本市「CES」がEVや自動運転分野に力を入れていることも、競合する自動車ショーの退潮傾向に拍車をかけている。米ゼネラル・モーターズ(GM)は米国内の人気車種であるピックアップトラック型のEVを22年年明けのCESで発表する。
新型コロナの影響で20年の開催を見合わせた世界五大自動車ショーの一つである北米国際自動車ショーは21年も中止され、現時点では次回の開催概要も明らかにされていない。大勢の消費者を集客して参加企業が新技術を競う従来型の自動車ショーは転換点を迎えている。