東エレク、次世代EUV向け装置をimec・ASMLの研究所に
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC08CP10Y1A600C2000000/
保存日: 2021/06/10 8:23
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オランダASMLは世界で唯一EUV露光装置を生産する
半導体製造装置大手の東京エレクトロンは8日、同業のオランダASMLとベルギーの研究機関imec(アイメック)が共同運営する研究所に次世代装置を供給する計画を発表した。ASMLが手掛ける先端露光装置である「EUV(極端紫外線)露光装置」の次世代機に組み合わせる。研究開発段階から微細化技術のトップ企業と組み、開発競争力を高める。
東京エレクトロンが装置を供給するのは、ASMLとimecが共同運営する「imec-ASML共同高NA EUV研究所」(フェルドホーフェン市)。半導体の回路線幅を細くする微細化技術のR&Dで世界トップレベルを誇る。
東京エレクトロンは半導体ウエハー上に感光剤(フォトレジスト)を塗布・現像する「コータ・デベロッパ(塗布現像装置)」を提供する。同研究所に装置を出荷するのは初めて。最先端半導体の研究開発に食い込むことで競争優位性を高める。
調査会社グローバルネット(東京・中央)によると、東京エレクトロンは塗布現像装置で9割弱の世界シェアを誇る。EUV露光装置向けでは、東京エレクトロンは100%のシェアを持つ。
共同研究では、ASMLの次世代EUV露光装置と、東京エレクトロンの塗布現像装置を一体化させて、半導体の生産性の向上を図る。東京エレクトロンの装置を2022年前半にも供給し、組み合わせた装置は23年にも稼働させる計画だ。
半導体の微細化では現在、線幅を5ナノ(ナノは10億分の1)㍍まで狭めた半導体が量産化されている。半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)が微細化で業界トップを走り、米アップルのスマートフォン「iPhone12」などに半導体チップを供給している。
足元では「5ナノ品」よりさらに微細化して性能を高めた「3ナノ品」の開発が進められており、TSMCは22年後半にも量産を開始する計画だ。今回開発する次世代EUV露光装置は、この「3ナノ品」以降の量産に適用する。
imecは半導体の微細化に向けた研究に力をいれており、多くの半導体関連メーカーとの共同開発を進めている。JSRはimecとの合弁会社でEUV向けフォトレジストを生産するほか、大日本印刷(DNP)はimecと共同で、次世代半導体向けフォトマスク(回路原版)の開発を進めている。
半導体の微細化では、微細な回路パターンをウエハー上に転写するEUV露光装置が欠かせない技術になっている。ただ、高度な技術力が必要でEUV露光装置を製造できるのは世界でもASMLだけで、ニコンやキヤノンなど露光装置の競合はEUV向けの開発から撤退した経緯がある。
微細化技術の開発では、EUV関連技術を持つASMLやimecなどとの協業が競争優位性を保つカギになる。東京エレクトロンは両者との連携を強化し、次世代半導体の開発で存在感を高める狙いがある。