米巨大IT、売上高最高でも寡占批判と隣り合わせ
作成者:
ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN290CO0Z20C21A4000000/
保存日:2021/4/29 22:30 (2021/4/30 5:11 更新) [有料会員限定]

米巨大IT(情報技術)企業の成長が加速している。新型コロナウイルスの流行に伴う生活様式の変化が追い風となり、28日までに2021年1~3月期決算を発表した4社の売上高は過去最高を更新した。ただ各社の事業拡大は新たな摩擦を生み、独占・寡占への批判が高まるリスクもはらんでいる。

アップル、アルファベット(米グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、フェイスブックが28日までに1~3月期決算を発表した。純利益も同四半期として過去最高を更新し、アルファベットはすべての四半期を通じて最高だった。

「感染拡大から1年になるが、デジタル技術の導入は加速している」。マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)はクラウドコンピューティング事業の成長持続を見込む。アップルのティム・クックCEOも「出社と在宅勤務の組み合わせが定着する」と述べ、自宅用パソコンの需要は縮まないと指摘した。

各社は強気な見方を示す一方、懸念材料もある。「供給の制約により、4~6月期は30億~40億ドル(約3300億~4300億円)の減収になる可能性がある」。28日の決算説明会でアップル幹部が世界的な半導体不足の影響に言及すると、米株式市場の時間外取引で同社の株価が一時下落した。

さらにプライバシー規制の強化などを背景に各社が他社の得意分野に攻め入り、摩擦が増していることが影を落とす。SNS(交流サイト)における個人情報の不適切な利用が批判を浴びているフェイスブックが「WhatsApp」などの対話アプリを強化しているのが代表例だ。

対話アプリでは自社製品に「iMessage」を標準搭載しているアップルと競う形になり、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOはアップルを「最大の競争相手」と指摘する。対立が深まるなか、アップルはインターネット広告に対する規制を強化。広告を収益源とするフェイスブック幹部は28日、「4~6月期から影響を受ける」と説明した。

フェイスブックは対話アプリを基盤とした電子商取引(EC)関連サービスの拡大を重点戦略に据え、EC関連ではグーグルの事業拡大も目立つ。一方、両社に「自陣」を侵される格好となるアマゾン・ドット・コムはネット広告を強化。グーグルやフェイスブックの金城湯池でシェアをじわりと高めている。

巨大IT企業による事業領域の拡大は独占・寡占批判とも紙一重だ。アップルのサービス事業の売上高は1~3月期に前年同期比27%増の169億100万ドルとなり、過去最高を更新した。アップルは「機器、ソフト、サービスを密接に連携させ、独自の価値を顧客に届ける」(クックCEO)ことを目指してきたが、競合企業などの視線は厳しい。

人気ゲーム「フォートナイト」の開発元は昨夏、サービス事業の稼ぎ頭であるアプリ配信サービス「アップストア」が反トラスト法(独占禁止法)に抵触しているとして訴えを起こした。音楽配信サービスではスウェーデンのスポティファイ・テクノロジーが「アップルミュージック」の競争条件が平等でないと批判を強めている。

反トラスト法をめぐっては既に米司法省などがグーグルやフェイスブックを提訴し、独禁当局も市場支配力が高い製品・サービスを足場として活用した事業拡大に厳しい視線を注ぐ。IT・ネット業界では「勝者総取り」が定石とされてきたが、高いシェアを握ることが足かせとなりつつある。

(シリコンバレー=奥平和行)

【関連記事】

・米IT大手、自前半導体競う AI頭脳に最適化へ脱インテル

・政府、ネット広告で寡占の米Googleけん制

・追跡型ネット広告、転換期に Appleが新OSで自主規制

・Apple、5年で米に46兆円投資 従来計画を2割積み増し