☆NY株ハイライト 125年目のダウ平均、攻めるアマゾン 採用視野か
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL27H0E_X20C21A5000000/
保存日:2021/5/27 7:11 [有料会員限定]

【NQNニューヨーク=張間正義】12銘柄で算出を始めてからちょうど125年目を迎えた26日のダウ工業株30種平均は前日比10ドル高の3万4323ドルと反発した。全般的に小動きだった株式相場だが、ネット通販のアマゾン・ドット・コムの動きが注目された。

26日のアマゾンは前日比0.2%高の3265.16ドルと3日続伸した。朝方に米映画製作大手メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)を84億5000万ドルで買収すると発表。動画配信サービス「アマゾン・プライム・ビデオ」の強化による収益拡大を期待した買いが入った。

アマゾンにとっては2017年に買収した食品スーパー、ホールフーズ・マーケットに次ぐ過去2番目の大型買収となる。MGMはスパイアクション映画「007」シリーズなどで知られる老舗だ。キーバンク・キャピタル・マーケッツは「(MGMの)豊富なコンテンツを考慮すると魅力的な買収価格」だと評価した。

もっとも、アマゾンは小幅な上昇にとどまった。今回の買収に米独禁当局がすんなり承認するかは見通せない。米議会は大手ハイテク企業のM&A(合併・買収)が競争を阻害しているとの懸念を強める。25日には首都ワシントンの司法長官がネット通販市場の価格拘束を問題視し、反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いでアマゾンを提訴したばかりだ。

メディアの主戦場となった動画配信市場で、アマゾンはライバル企業に対して見劣りする面もある。制作費が巨額化している動画配信業界では21年にネットフリックスが170億ドル、ウォルト・ディズニーが160億ドルをコンテンツの制作に費やす。今月話題を呼んだAT&Tのメディア事業「ワーナーメディア」とディスカバリーの統合新会社は年200億ドルをコンテンツに投じると伝わる。2億人超の有料サービス会員を抱えるアマゾンといえども、この分野でどこまで対抗できるか不透明だ。

注目されたもう一つのアマゾンの動きは薬局の実店舗展開の検討だ。ホールフーズ・マーケット内に出店する形などで処方箋薬の販売事業をさらに強化すると26日に伝わった。アマゾンは昨年11月にネットで処方箋薬を購入できるサービスを始めている。競争激化懸念からウォルグリーン・ブーツ・アライアンスやCVSヘルスなど既存の薬局大手株は軒並み下落。ネットフリックスとディズニーがともに小幅高で終えたことを考慮すると、アマゾンの事業拡大が既存の小売業者を追い詰める「デス・バイ・アマゾン(アマゾンによる死)」の影響は薬局業界では依然、大きい。

そのアマゾンだが、株式分割実施の噂が出て久しい。直近では4月末の四半期決算発表と同時に株式分割を発表するとの観測が強まった。実際に発表されることはなかったが、3000ドル台という高株価からいつ発表されてもおかしくはない。同じ高株価銘柄では画像半導体のエヌビディアが21日、1株を4株にする株式分割を発表した。

株式分割は1株当たりの株価水準を引き下げてダウ平均の構成銘柄に加わることが目的だと説明する米メディアもある。ダウ平均はユニバース(母集団)の少なさや算出方法から、S&P500種株価指数などに比べ米株式市場の実態を正確に表していないとの指摘も多い。それでも、世界で最も有名な株価指数であることには間違いはない。米国を代表する30銘柄としての肩書は、どの企業も欲するところだろう。

この日の株主総会でアマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は同社の設立記念日にあたる7月5日に退任することを明らかにした。次期CEOにはクラウド部門トップのアンディー・ジャシー氏が同日付で昇格する。設立された27年前の94年7月5日のダウ平均は3652ドルで、その後9倍以上に上昇した。

米LPLフィナンシャルによると、過去125年間のダウ平均の年間の平均上昇率は7.7%。最も大きかったのが1915年の82.7%だ。一方、下落率で最大だったのが1931年の52.7%だった。今月7日までに1440回の過去最高値の更新があった。次の節目となる26年の算出開始130年目にはアマゾンは「クラウド業界の巨人」としてダウ平均の構成銘柄となっているのだろうか。