最低法人税率「15%を下限に」、米財務省が提案(写真=ロイター)
作成者:
ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2101Y0R20C21A5000000/
保存日:2021/5/21 6:06 (2021/5/21 6:25 更新)
イエレン米財務長官=ロイター
【ワシントン=大越匡洋】米財務省は20日、法人税の国際的な最低税率について、経済協力開発機構(OECD)との協議で「15%を下限とし、議論のなかで水準を引き上げていくべきだ」と提案したと発表した。これまで米国は21%程度を最低税率の水準として念頭に置いてきた。低税率国に歩み寄り、議論の前進を狙う。
イエレン米財務長官は4月に「30年続く『底辺への競争』、法人税の引き下げ競争を終わりにしよう」と訴え、国際的な最低法人税率の実現を呼びかけた。米財務省は今回の発表で「国際税制を安定させ、世界の競争の場を公平にしなければならない」などと訴えている。
過去のOECDの最低税率の議論では、低税率国として知られるアイルランドの12.5%を目安としてきた。低税率国の想定と、21%程度を念頭に置く米国との開きは大きかった。今回、米国が「15%以上」への譲歩案を示したことで、OECDと20カ国・地域(G20)は年央の合意をめざして詰めの作業を急ぐ。
バイデン米政権は2兆ドル(約220兆円)を超えるインフラ長期投資計画への財源を賄うため、連邦法人税率を現在の21%から28%に上げることをめざしている。米国だけ税率を上げれば米企業の国際競争力がそがれる。各国が最低税率を導入すれば競争条件を大きく損なわずに済むとの思惑もあり、米国は議論推進にカジを切った。
すでに法人増税を表明している英国、財政が悪化している日本など他の先進国も賛同しやすいとの読みも働いている。もっともアイルランドは税率の水準を上げることに難色を示している。先進国主導の議論への新興国の警戒感もなお解けていない。
最低税率は多国間条約とはせず、対応は国内法制に委ねる方向で議論が進んでいる。仮に合意できたとしても、どう実効性を担保するのかという課題もある。