台湾株が急落 「経路不明のコロナ確認」で個人投げ売り(写真=ロイター)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB00043_S1A510C2000000/
保存日:2021/5/12 20:19 [有料会員限定]
12日の台湾株式相場が急落した。新型コロナウイルスの市中感染確認をきっかけとして景気敏感株を中心に全面安となった。台湾は半導体の台湾積体電路製造(TSMC)など世界屈指のハイテク銘柄を抱えるだけに、日本など他の株式市場の参加者の間でも台湾株安に懸念が広がった。
台湾衛生当局は11日、感染経路不明な感染者6人を確認した。当局は警戒レベルを引き上げ、大規模集会の中止など感染防止策を強化すると発表。12日も新規の感染者が確認され、今後さらなる警戒レベルの引き上げの可能性も示唆した。台湾はここまで世界で最も感染抑制に成功した地域の1つだった。明らかになった感染者数はインドや欧州、日本などと比べてわずかながら、経路不明な感染が久しぶりに確認されて警戒感が高まった。
12日の台湾株市場では、運輸や鉄鋼などの素材関連、金融などの景気敏感銘柄を中心に売りが膨らんだ。「このところ売買代金の3割超を占めているデイトレーダーの投げ売りが相場の急落につながった」(台湾の大和国泰証券の小西健太郎氏)という。一方で医薬株やマスクなどの防疫株の一角が急騰するなど、昨年のコロナショック初期をほうふつとさせる値動きとなった。
主要な株価指数である加権指数は一時、前日比1417・86ポイント(8.6%)安の1万5165・27まで下げた。台湾地元紙によると、取引時間中の下落幅としては過去最大となり「驚きの99分」と伝えられた。主力のハイテク株もTSMCが9.3%安、電子機器製造の鴻海(ホンハイ)精密工業は9.8%安、半導体開発・設計の聯発科技(メディアテック)は9.9%安まで下げる場面があった。
もっともTSMCなどは取引終了にかけて下げ渋った。ロイター通信の報道によると、相場の急激な変動時に市場介入する台湾の公的ファンドである国家金融安定基金が臨時会合を開く可能性があるという。同ファンドがTSMC株を買い支えたとの観測も出ており、一定の安心材料となっている。
台湾域内の感染拡大に歯止めがかからずに世界の半導体のサプライチェーン(供給網)が影響を受けるような事態となれば話は別だが、12日の台湾株急落が他市場の長期的な混乱を招くとの見方は今のところ少ないようだ。
(NQN香港=川上宗馬)