不動産ID、提供始まる 土地取引の円滑化に期待
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ230D10T20C21A3000000/
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2021/4/27 2:00 [有料会員限定]
不動産の仲介会社やIT企業などで構成する不動産テック協会(東京・渋谷)は国内の建物や土地などに付けた不動産IDの提供を始めた。地図サービス提供のスタートアップ、ジオロニア(同・文京)と連携、協会が資金を提供するなどして開発を支援した。共通の不動産IDをもとに情報を連携しやすくするほか、業務の効率化を進める。一般にも提供することで、他業界との新たなサービス開発にもつなげ不動産市場の活性化を目指す。
ジオロニアが国土交通省や日本郵便などのオープンデータから開発した地図データを基に全国の建物や土地にIDを割り振る。現状は大手デベロッパーや仲介会社など各社が「国土交通省位置参照情報ダウンロードサイト」物件情報を個別に管理し、関連データの連携はできていない。「三丁目」や「3丁目」といった表記の違いもあり、一つの情報収集にも時間がかかっているのが実情だ。
共通の不動産IDができると、住所や物件名が若干違った表記でも同一物件と特定する。無駄な手間が省けて不動産取引が増えるほか、郵送物を間違えることなく最新の住所に届けることが期待される。保守や修繕情報などを共通IDに集約することで、各種情報の一元管理も可能になる。街の夜間光情報と組み合わせることで空き家の特定にもつながる。共通IDの取得は無料とし、正規の住所や物件名まで確認する場合は有料となる。
異業種との連携で新たなサービスが期待される
不動産テック協会の巻口成憲代表理事は「災害情報も蓄積できるため、協会内でとどめるだけでなく生保業界など異業種との新サービスを進めていきたい。政府や東京都などと連携していく」と話す。この1年で100社以上が共通IDを使った新たな事業に乗り出すことを見込んでいる。
不動産IDは土地や建物にひも付く「マイナンバー」を想起させる。そこで問題になるのが個人情報保護との関係だ。不動産テック協会は「開示で流通量が促進されるなら(保護と開示の)どちらが公の利益に資するかという比較検討によって判断されるべきと行政は解釈している」と話す。ただ、地番が個人情報に該当するかどうかについてはあいまいな部分も残るため、行政も個人情報保護との関係を整理する方向に向かっていると、同協会は言う。
国内の不動産業界は、売り手と買い手、あるいは売り手同士が持つ情報に格差が生じる「情報の非対称性」で生き残ってきた企業が少なくない。1社しか知らない情報に価値を見いだしてきたためだ。不動産共通IDの普及は市場の透明化を促す可能性が大きい。情報格差に頼るのではなく、開発力や提案力などの総合力が問われる。(原欣宏)