台湾TSMC創業者「米国はコスト高」 誘致活動をけん制
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM213MP0R20C21A4000000/
保存日:2021/4/21 19:30
TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏は21日、台湾での半導体生産の重要性を強調した(台北市)
【台北=中村裕】台湾積体電路製造(TSMC)の創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏が21日、台北市内で講演した。半導体不足が深刻化するなか、張氏は引き続き、海外ではなく台湾での生産が重要との見方を強調した。「(例えば)米国は台湾に比べ製造業に望んで入る人が少なく、優秀な人材を大量に確保するのが難しい。コストも非常に高い」と理由を語った。
半導体不足が続き、各国政府の間では現在、TSMCなど台湾企業の誘致が活発化している。張氏はこうした各国の動きを発言でけん制し、台湾での生産の重要性を訴えた。「台湾には自ら進んで製造業に入る優秀な人材が非常に多い。これは(半導体生産に)非常に重要なこと。米国はそうではない」などと指摘した。
TSMCは昨年、米側の強い要請を受け、アリゾナ州に海外初の先端半導体の工場進出を決めた。現在建設中で総投資額は当初予定していた120億ドル(約1兆3000億円)を大きく上回る見通し。コストが大きな課題として浮上している。張氏も「(米政府から)短期的に補助金をもらっても、長期的なコストは賄えない」と指摘した。
TSMCの強みについては「経営の上層部を全て(相手を理解しやすい)台湾人が占めることだ。ライバルのサムスン電子も同じく上層部は韓国人が占めている」などと述べた。
米大手インテルについては「彼らは台湾のファウンドリー(受託生産)ビジネスが今、こんなに重要になるとは思わなかったはずだ」と指摘した。「TSMCを1987年に創業する際、出資を求めたが見下されて断られた。30年たちインテルは今ごろ、TSMCと同じビジネスに参入すると発表したが、それは思いもしなかったことだろう」と皮肉った。
張氏は米テキサス・インスツルメンツ(TI)で20年以上勤めたのち、TSMCを創業。長く経営を率い、2018年6月に完全に引退した。