LVMH1~3月32%増収 コロナ前より好調、中国けん引(写真=AP)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR13D8L0T10C21A4000000/
保存日:2021/4/14 6:35 [有料会員限定]

英国ではロックダウン(都市封鎖)が緩和され、ルイ・ヴィトンの店舗前には入店待ちする買い物客の列ができた(12日、ロンドン)=AP

【ウィーン=細川倫太郎】仏高級ブランド最大手、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが13日発表した2021年1~3月期の売上高は前年同期比32%増加した。中国を中心に主力ブランド「ルイ・ヴィトン」などの販売が伸び、新型コロナウイルスの感染拡大前の水準を超えた。強固な収益体質を背景に、株価も騰勢を強めている。

「今回の業績はパンデミック(感染大流行)からの世界経済の回復を反映している。非常に良いスタートを切れた」。13日、LVMH幹部は電話会見でこう強調した。1~3月の売上高は139億ユーロ(約1兆8000億円)と市場予想(126億ユーロ)を上回り、コロナ禍前の19年1~3月期と比べても11%増えた。

けん引したのは、全体の約5割を稼ぐファッション・皮革で、45%増収を記録した。ルイ・ヴィトンを筆頭に好調で、3月には東京・銀座で旗艦店をリニューアル開業した。「クリスチャン・ディオール」や「マーク・ジェイコブス」も伸びた。ハンドバッグや財布などはオンライン販売にも支えられた。

1月に約1兆7000億円で買収した米宝飾品大手ティファニーの効果も大きい。唯一、LVMHの弱点とされていた時計・宝飾品は2.4倍に拡大した。比較的手ごろな値段で買えるティファニーはコロナ禍で強さを発揮した形だ。LVMHはティファニーの店舗の改装や販路の拡大を進め、ブランド力に一段と磨きをかけようとしている。

地域別ではアジアが86%増と勢いが際立つ。特に中国は経済がいち早く回復し、北京や上海の店舗ではブランド品を買い求める富裕層でごった返している。20年はマイナスが続いてた米国も23%増と回復が鮮明だ。ワクチンの普及が遅れている欧州はまだマイナスだが、12日から小売店が再開した英国ではロンドンの店舗で入店待ちの列ができるなど、消費意欲は衰えていない。

LVMHの快進撃を支えるのは、ブランド力の強さだ。70以上のブランドを抱え、圧倒的な資金力で品ぞろえや販売網を強化している。2月にはLVMH系の投資会社などが世界的に名の知れたドイツのサンダルメーカー、ビルケンシュトックの過半の株式を取得した。これに先立ち、高級シャンパン「アルマン・ド・ブリニャック」の米運営会社への出資も決めるなど、着々と足場を固めている。

株価はほぼ一貫して上昇している。13日終値は約595ユーロと過去最高値を更新し、19年末からの上昇率は4割を超える。時価総額は約39兆円と欧州企業では首位で、日本で最大のトヨタ自動車の1.4倍だ。UBSは3月末のリポートでLVMHを「買い」推奨とし、目標株価を640ユーロに引き上げた。

不安もある。新型コロナの変異ウイルスが猛威を振るい、世界的に感染が再び拡大している。富裕層など一部に偏っている面も大きく、ブランド品の買い物客のすそ野が広がるかも不透明だ。中国ではバブルを懸念する当局が金融引き締めに動くとの警戒感も強い。

他のブランドでは、高級ハンドバッグ「バーキン」などで知られる仏エルメスも好調が続く。市場への供給を極限まで絞ることで、消費者はなかなか入手できずにいるという巧みなブランド戦略で、商品価値を高めている。一方で、依然、苦境から抜け出せないスイスの時計メーカーなども少なくない。

米バンク・オブ・アメリカは高級ブランド業界について「極端な二極化が続く」と予想する。生き残りをかけて再編が加速する可能性もある。

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