NY株ハイライト コインベース上場に色めく市場、一時72%高も割高感意識
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL15H1V_V10C21A4000000/
保存日:2021/4/15 7:58 [有料会員限定]
【NQNニューヨーク=古江敦子】14日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3営業日ぶりに反発し、前日比53ドル高の3万3730ドルで終えた。新型コロナウイルスのワクチン普及が遅れるとの懸念が後退し、景気敏感株への買いが再開した。そんな中で話題を集めたのが、待望されていた暗号資産(仮想通貨)取引所の米コインベース・グローバルの上場だ。
同日に米ナスダック市場に上場したコインベースの初値は381ドルと、取引所が事前に示した参考価格の250ドルを52%上回った。旺盛な需要を背景に一時は参考価格を72%上回る429.54ドルまで上昇し、米市場は色めき立った。だが取引終了にかけては上値が重くなり、31.3%高の328.28ドルで通常取引を終えた。
コインベースを巡っては期待と懸念が交錯する。フォレックス・ドットコムのマット・ウェーラー氏は「上場は仮想通貨という新興の投資資産の安全検証の意味合いが強く、保守的な投資家が仮想通貨市場で投資し始めるきっかけになりそうだ」と歓迎した。
世界には数千の仮想通貨があるとされるが、コインベースはビットコインとイーサリアムを中心に60弱のコインを選別して売買を請け負う。調査会社メッサリによると「新たな仮想通貨がコインベースで取引されると、騰落に差は出るが平均で最初の5日間に91%上昇した」という。コインベースに選ばれれば安全性のうえで太鼓判を押されたと受け止める投資家も少なくないようで、新たな投資家の呼び水となりそうだ。
「ご祝儀」の買いも入りビットコインは14日朝方に一時1ビットコイン=6万4829ドル14セントと過去最高値を更新。年初から2.2倍に跳ね上がった。BCAリサーチは、15兆ドルと推定される金などを含む非法定通貨市場で仮想通貨が占める割合はまだ1割と分析する。今後の市場参加者の増加を見込み「ビットコインは12万ドル近辺まで上昇する」とみる。
取引手数料が収入源となるコインベースの収益は、仮想通貨の価格上昇につれて勢いづく。6日に開示した2021年1~3月期の月間の取引利用者数は610万人と、20年12月期通期の280万人から2.2倍に増えた。21年12月期は最大で月間700万人の利用者が見込めるとし、収益力の先行きは明るそうだ。
ナショナル・ホールディングスのアート・ホーガン氏は「多くの金融機関は仮想通貨の投資を禁じているが、コインベース株への投資で間接的な参入が可能になった」と評価する。だが同時に「株価の割高感が強まれば売り圧力が強まり変動性が高まる可能性がある」と慎重だ。コインベースの時価総額は初値ベースで708億ドルと、ニューヨーク証券取引所などを傘下に持つインターコンチネンタル取引所の時価総額(13日終値で668億ドル)を上回った。コインベース株価が取引終了にかけて伸び悩んだのは、時価総額の膨らみと株価の割高感が意識されたためのようだ。
コインベースは新株を発行しない直接上場の方法を選んだ。新規株式公開(IPO)のように、上場後に既存株主が保有株売却を一定期間禁じられるロックアップに縛られないため、株価が変動する警戒感はくすぶる。
コインベースのブライアン・アームストロング最高経営責任者(CEO)は「金融当局の規制強化が仮想通貨ビジネスの最大のリスク」と認めており、市場では高めの取引手数料が同業との競争力を弱めるとの懸念もある。「長期的に仮想通貨の取引で高い評価を維持する」(フォレックス・ドットコムのウェーラー氏)との期待は根強い一方で「割高感からの売り」という市場の洗礼にどう耐えていくか、市場の注目は続きそうだ。