今からジュニアNISA 「終了後」の手続きに注意
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB019X60R00C21A4000000/
保存日:2021/4/10 2:00 [有料会員限定]
未成年者向けの少額投資非課税制度(ジュニアNISA)の口座数がじわりと増えている。利用が伸び悩み、2023年での終了が決まっている。だが、それに伴う制度の変更で、使い勝手が良くなった面がある。
都内の外資系企業に勤める40代の男性は昨年、証券会社に11歳の息子名義でジュニアNISAの口座を開いた。「これからの世の中を考えると、資産形成は欠かせない。早くから投資を経験させておきたい」と話す。
ジュニアNISAは未成年者の名義で専用の口座を開き、株や投資信託などに投資する。1年間に累計で80万円を投資でき、その年を含めた最長5年間、売却益や配当などが非課税になる。年間の投資枠が少ない以外、投資できる商品など基本的な仕組みは成人用の「一般NISA(少額投資非課税制度)」に近い。
主に親や祖父母などが「子どものため」に出したお金を株や投信などで運用することを想定している。口座の名義は未成年者(子ども)だが、通常は親などが口座を管理し、投資する銘柄を選んだり取引をしたりする。
20年12月時点の口座数は速報値で約45万。成人向けの一般NISAやつみたてNISA(合計約1524万)に比べると普及しているとは言い難い。16年に制度を開始したものの、口座数や実際の利用が低調なため制度の終了が決まった。ところが、この1年間では口座数が約10万増えた。一因とみられるのが「引き出しルール」の変更だ。
当初のジュニアNISAは株や投資信託などで運用して利益を出しても、子どもが18歳になるまでお金を引き出さないことが前提だった。仮にゼロ歳の子どもの口座で80万円分の株を購入し、翌年に120万円で売却したとする。口座には120万円があるが、そのまま引き出して使えるのは基本的に子どもが18歳になってから。18歳未満で引き出した場合、原則として過去に遡って売却益の40万円に通常の証券口座と同様の課税がされてしまう。
ところが23年での制度終了が決まり、24年以降はいつ引き出しても非課税になるよう、ルールが変わった。非課税のメリットを受けやすくなり、「ジュニアNISAについての相談が増えた」とファイナンシャルプランナー(FP)の高山一恵氏は話す。
制度の変更は見方を変えると、家族で使えるNISAの投資枠が拡大したともいえる。夫婦2人で1年間に新規の投資ができるのは一般NISAなら1人120万円で計240万円。ジュニアNISAを併用すれば23年までは子ども1人につき年80万円、今年から始めれば非課税枠が3年間で240万円増える。
ジュニアNISAは親など管理者の意向で様々な使い方ができる。将来、子どものために使う前提で投資信託などを少しずつ積み立てるほか、個別株などである程度リスクのある運用をして売却益を狙い、非課税のメリットを大きくしてもよい。資金に余裕があれば、子どもに投資を体験させる方法もあるだろう。「祖父母からの贈与などで子供名義のまとまった資金がある人は使う価値が大きい」とFPの安藤宏和氏は話す。
新規投資ができるのは23年まで。だが、それまでにジュニアNISAで投資した金融商品については、5年の運用期間が終了した後も非課税で持ち続けられる。例えば21年の投資枠で購入した株式は、ジュニアNISAの非課税口座で保有できるのは25年末まで。そのときに「継続管理勘定」に移すと、新規の投資はできないが、子どもが成人するまで売却益や配当、分配金が非課税となる。さらに保有する株式などを成人用NISA口座に移すこともできる。
気を付けたいのが、金融商品を継続管理勘定に移す手続きが必要になること。具体的には運用期間の終了間際に口座を持つ金融機関に「依頼書」を提出する。手続きを怠ると金融商品は課税口座に移ってしまう。継続管理勘定から成人用NISAへの移行も同様だ。
24年以降は継続管理勘定やジュニアNISA口座から、いつでも非課税で資産を引き出せる。ただし、その際は一部だけを引き出すことはできず、ジュニアNISA全体を終了しなければならない。運用を終えるときに金融商品が元本割れしている事態は避けたい。「教育費など確実に必要となる資金は投資に充てず、預貯金などで確保しておくべきだ」とFPの菅原直子氏は話している。
(大賀智子)