Apple時価総額、3年ぶり世界首位 3月末2兆ドル超
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD300VR0Q1A330C2000000/
保存日:2021/4/2 15:30 [有料会員限定]

世界企業の株式時価総額で米アップルが3年ぶりに首位になった。3月末で唯一2兆ドルを超えた。新型コロナウイルスで市場が混乱していた1年前と比べて、8割以上増えた。上位にはコロナ禍でも稼ぐ力を高めている米巨大IT企業が並び、国別では米国が4割を占めるようになっている。

QUICK・ファクトセットのデータを使い、世界の上場企業約4万6000社の3月末の時価総額を日本経済新聞社が集計した。株価に発行済み株式数をかけた時価総額は、株式市場での評価を表す。

2位のサウジアラビアの国営石油会社、サウジアラムコを除き、上位にはマイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、フェイスブックという米IT企業5社が並ぶ。これら5社の時価総額は合計で8兆㌦弱に達し、世界の時価総額全体の7%を占めるまでになっている。

市場の評価を高めている理由が収益力の高さだ。アップルの2020年10~12月期の純利益は最高を更新。新型コロナで在宅勤務や遠隔教育が浸透するなか、「これまでで最強の製品ポートフォリオを持っている」(ティム・クック最高経営責任者=CEO)と、高速通信規格「5G」に対応した高価格帯のiPhoneの販売が増えた。

マイクロソフトも職場向けのチャットアプリ「Teams(チームズ)」などクラウド関連事業が伸びた。アマゾン、アルファベットもそろって10~12月期に最高益となっている。

順位を大きく上げたのが電気自動車(EV)を手がける米テスラだ。時価総額は1年で7倍弱の約6400億㌦まで拡大した。ESG(環境・社会・企業統治)をテーマにする投資マネーの流入もあり、トヨタ自動車と独フォルクスワーゲンの合計を上回る規模になっている。

逆にエネルギー株は評価を下げている。サウジアラムコは19年度末の首位から2位に転落した。世界で脱炭素の動きが加速するなか、投資先の温暖化ガス排出量を将来的に実質ゼロとする目標を掲げる運用会社も出始めた。英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(82位)や英BP(183位)は大きく順位を落とした。

新型コロナで生活様式が変わり、新たな消費活動を支える企業の伸長も目立つ。クラウドサービスに欠かせない半導体関連は軒並み順位を上げた。順位を17つ上げた米エヌビディア(24位)のコレット・クレス最高財務責任者(CFO)は「過去1年でゲームがグローバル文化に不可欠なものとなる新しい時代に突入した」と話す。台湾積体電路製造(TSMC、11位)や韓国サムスン電子(12位)も順位を上げた。

地域別でみると、米国企業の時価総額が世界の4割弱まで上昇した。日欧企業の比率は前年度と比べ低下しており、「米国1強」が際立つ。

主要株価指数の20年度の騰落率はIT企業の比率の高い米ナスダック株価指数が72%上昇するなど、日本(東証株価指数、39%)や欧州(STOXX600欧州株価指数、34%)を上回る。世界の中央銀行の金融緩和によって膨らんだ投資マネーがIT企業に流れこみ、米国株優位の相場となった。

日本企業の存在感は小さい。日本企業で最上位はトヨタ自動車(32位)。ソフトバンクグループ(62位)、ソニーグループ(98位)と上位100社には3社しか入っていない。産業構造の新陳代謝が遅れていることや、装置産業が多く石炭火力への依存度が高いことからESGマネーも集まりにくい。

ただ成長を見込める銘柄は増えている。1兆円を超えたのは20年度末時点で149社と、過去10年で最多となった。工具販売のMonotaRO(モノタロウ)や電子商取引(EC)決済システムのGMOペイメントゲートウェイ、半導体関連のアドバンテストは年度末ベースで1兆円超となった。

モノタロウは修理や整備などの通信販売に特化、時価総額は1年で約2倍になった。GMOペイメントゲートウェイは動画視聴サービスなどコロナ下で成長するデジタルコンテンツの料金支払い需要も増えている。アドバンテストやレーザーテックといった半導体関連銘柄も伸長している。

21年度はコロナ後の経済回復が焦点になる。米英はワクチン接種したことを証明する「ワクチンパスポート」を発行して経済活動の正常化を図る。「日本はワクチン接種が遅れており、経済回復のスピードや企業業績で米英との差が開く」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次氏)との見方もあるなか、コロナ後の新需要を捉えた企業の成長を後押しできるかが重要になる。