東エレク河合社長「投資活発、最高益の更新視野」
作成者:
ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD19CHA0Z10C21A3000000/
保存日: 2021/3/26 17:45 [有料会員限定]
東エレク河合利樹社長
東京エレクトロンの業績が拡大している。半導体メーカーの設備投資が活発で、製造装置の引き合いが強い。自動車向けの半導体不足も設備投資に拍車をかけた。2022年3月期の見通しや投資戦略について、河合利樹社長に聞いた。
――製造装置の受注の状況はどうでしょうか。
「IoTの普及で半導体を使う最終製品が拡大している。(演算を担う)ロジック半導体向けや、受託生産会社向けの需要が旺盛だ。高速通信規格『5G』モバイルやデータセンターの投資が増え、メモリーのなかで出遅れていた(データを一時保存する)DRAMの投資も回復してきた。21年の半導体前工程製造装置(WFE)市場の伸びは前年比20%に迫りそうだ」
――自動車メーカーが減産を迫られるほど半導体不足が深刻です。
「製造装置企業にとっては最高のビジネス機会だ。ネガティブなことは一つもない。型の古い装置まで引き合いが増えている。納入した装置の改造や部品交換を行う『フィールドソリューション(FS)』事業にも大きな収益機会になっている。装置の生産性を改善したり、処理枚数を増やすために装置をアップグレードしたりする需要が高まっているためだ」
――どの分野の販売に注力しますか。
「当社が高いシェアを持つ『成膜・レジスト塗布・エッチング・洗浄』の4つの主力工程の装置を伸ばす。特に、微細化に欠かせない『EUV(極端紫外線)』露光向けコータ・デベロッパ(塗布現像装置)はシェア100%の製品だ。技術革新をけん引する主力工程装置のシェアをしっかり押さえることで、WFE市場を上回る成長を実現できる。過去最高益だった19年3月期の水準を超えることも十分可能だ」
――21年3月期の研究開発費は1350億円と過去最高になる見通しですが、来期はさらに増えるのでしょうか。
「半導体市場の技術革新が加速し、装置メーカーも顧客の課題に継続的かつスピード感を持って対応していくことが求められている。大規模な研究開発投資は始まったばかりで数年は続く。来期も過去最高の規模になるだろう。安定した財務基盤が必要で、借り入れに頼らず稼いだキャッシュで投資を続けていく」
――市場では半導体バブルを指摘する声もあります。ピークは近いのでは。
「今後、5~10年はICT(情報通信技術)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、脱炭素、スマートシティー、ポスト5Gに伴う技術革新が続く。大容量化や高速化、高信頼性、低消費電力が求められ、それらを支えるのは半導体技術だ」
「半導体の市場規模は誕生から約70年で4000億ドル(約44兆円)を超えた。30年には1兆ドルになるとみる。約70年かけてできた規模の市場が、次の10年でもう一つできるということだ。微細化の次には、DRAMなどの3D化が控える。半導体の『ビッグイヤーズ』は数年で終わるものではない」
微細化で出遅れていた米インテルは、数年で最大200億ドル(約2兆1700億円)を投じる半導体工場の新設に乗り出した。インテルは東京エレクトロンにとって売上高の2割(2020年3月期)を占める最大顧客だ。さらなる業績拡大の好機となる。
インテルは、先端半導体の生産に不可欠なEUV(極端紫外線)を使った製造を増やす公算が大きい。東エレクが独占供給する高付加価値なEUV露光向け塗布現像装置の出荷が拡大し、利益率向上にもつながるとみられる。
ただ、インテルが一連の投資拡大で米政府による補助金を活用する場合、米企業が優遇される可能性があることには注意が必要だ。東エレクは成膜装置やエッチング装置のシェア拡大を狙っているが、アプライドマテリアルズやラムリサーチなどの米国勢も研究開発を積極化している。好況期だからこそ、競争は激しい。(長谷川雄大)