会計が分かるクイズ アマゾンvs.アリババのEC対決
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOMC166X40W1A310C2000000/
保存日: 2021/03/25 7:47
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写真はイメージ=PIXTA
ハードルが高い、難しいというイメージがある会計。しかし、実際のビジネスを念頭において財務諸表を読むと、驚くほど企業の特徴が会計に反映されているのが分かる。SNS(交流サイト)で話題の「大手町のランダムウォーカー」こと福代和也さんが出題する会計クイズを解いて、ビジネスや投資に役立つ企業への理解を深めていこう。
今回のテーマは【海外EC大手の貸借対照表】だ。
コロナ禍でEC(電子商取引)はすっかり身近になった。その2強と言えるのが米アマゾン・ドット・コムと中国のアリババ集団。しかしビジネスモデルは大きく異なる。貸借対照表からその点を見よう。
EC業界で世界トップを争う米アマゾン・ドット・コムと中国のアリババ集団。同じような業態に見えるが、消費者が支払うお金の先は大きく異なる。この点を踏まえると、この貸借対照表はどちらのものだろうか?
注 : アリババ集団は2020年3月期、アマゾン・ドット・コムは20年12月期
まず目を引くのが有形固定資産の比率の違いだ。ネット通販においては、これは商品を保管するための物流倉庫を持っているかの違いと言い換えることもできる。貸借対照表の負債の部も両者では大きく異なる。ここにおいては、流動負債の多くを占めるのは営業債務。商品を自前で仕入れる業態で発生するものだ。物流倉庫などに投資を振り向けている場合、長期借入金が中心の固定負債が膨らむ傾向にある点にも注目したい。
Point1 アマゾン・ドット・コムの収益モデル
米アマゾン・ドット・コムは自社が消費者から代金を受け取り、自社で物流も手掛ける「直販型」のビジネスモデルだ。必然的に在庫を必要とするため、それを保管するための物流倉庫が必要になる。このため、有形固定資産は大きくなりがちだ。また、取引先のメーカーや小売店から商品を仕入れる関係上、営業債務が発生する。このため、流動負債が大きくなるビジネスモデルと言える。
Point2 アリババ集団の収益モデル
中国・アリババ集団のビジネスモデルは、企業に通販サイトという場を提供して個人と結びつける「マーケットプレイス型」だ。消費者への商品配送は取引先企業が行う。アリババは企業から売り上げに応じた手数料収入と、場所を提供することで発生する出店料を受け取る。商品在庫を必要としないため、資産も負債も軽いという特徴がある。日本企業で言えば楽天がそれに近いビジネスモデルだ。
①がアリババ集団、②がアマゾン・ドット・コム
直販型とマーケットプレイス型では、売上高の規模にも違いが出る。直販型が消費者から直接代金を受け取るのに対し、マーケットプレイス型は取引額の一定割合を売上高として計上するためだ。このため、米アマゾン・ドット・コムの売上高は中国・アリババ集団よりはるかかに大きいが、EC事業の流通総額ではアリババの方が上回っている。利益率も、手数料収入が中心のアリババの方が高い。
●アマゾンは商品の配送を自ら行う直販型のEC。物流倉庫を必要とするため、有形固定資産は大きくなる
●アマゾンは取引先企業に商品を発注し、物流倉庫に保管する。これに伴い流動資産である営業債務が発生する
●アリババは企業に販売の場を与えるマーケットプレイス型のEC。在庫を必要としないため、有形固定資産は軽い
●アリババは取引先企業から出店料や売上手数料を受け取る。仕入れコストが発生しないため、利益率は高い
出題者はこの人
福代和也さん
Funda 代表取締役。中央大学専門職大学院修了、PwCあらた有限責任監査法人を経て2018年から現職。会計およびマーケティングに関するコンサル業務をメインに行う。「大手町のランダムウォーカー」としてSNS上で会計クイズを出題中。
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