米金利上昇トレード、第1幕は終了へ(NY特急便)(写真=AP)
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN24E880U1A320C2000000/
保存日: 2021/3/25 6:00 [有料会員限定]
FRBのパウエル議長は「インフレの影響は大きくもなければ継続もしない」との考えを繰り返し表明=AP
急ピッチな上昇が続いていた米長期金利が落ち着きを取り戻している。24日は金利が下落(債券価格は上昇)するなか、ハイテク株の多いナスダック総合株価指数は続落した。従来のトレンドと逆だ。株式市場では長期金利の方向感に呼応した取引の一巡感が漂う。
18日に一時、1.75%と約1年2カ月ぶりの水準に上昇した米10年物国債利回りは24日、1.6%の節目を下回る場面があった。今週にバイデン政権による3兆ドル(約320兆円)規模の追加経済対策が浮上しても、市場は目立った反応をしていない。
先週までの緊張感は薄れた。米連邦準備理事会(FRB)は19日、米大手銀に対する「補完的レバレッジ比率(SLR)」規制の特例を3月末で撤廃すると発表。市場では撤廃が米国債売りを招くとの見方もあったが、今の所波乱はない。
撤廃はある程度織り込まれていた。クレディ・スイスの有力アナリスト、ゾルタン・ポズサー氏はFRBの公表前に「特例が終わっても混乱を恐れる必要はない」と指摘していた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)が金融緩和の継続を決めた同じ17日、ニューヨーク連銀は「リバース・レポ」の取引枠拡大を発表した。同取引は民間金融機関が保有する債券を担保に資金を供給し、米銀のバランスシート圧縮につながる。「不測の事態は起こさせない」という当局のメッセージだと受け止めた市場参加者は多かった。
需給面でも長期金利の急ピッチな上昇は抑えられるとの見方が増えている。バンク・オブ・アメリカは、投資家の四半期ごとのリバランスで株式売り・債券買いが410億ドルに達すると見込む。日本勢にとっては為替リスクヘッジ後でも米国債利回りは魅力的な水準で、4月以降は買いが増える可能性もある。
景気回復やインフレ期待に合わせて金利が上がるのは自然な姿だ。株式投資家にとって重要なのは、金利上昇を起点にしたローテーションの持続性だ。グロース(成長)株からバリュー(割安)株へのシフトは強烈だったためだ。
出遅れ銘柄の代表だったゼネラル・モーターズ(GM)株は長期金利と並走し、昨年10月末から今年3月18日の日中高値まで約80%上げた。その後に金利が下がると同社株も下落。電気自動車の強化などで「金利離れ」ができるかが焦点だ。
米小型株も資金シフトの恩恵を受けてきたが、モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏はすでに推奨を取り下げた。中小型株指数のラッセル2000は15日の高値まで半年弱で50%強上げた後、下げが目立つ。
足元ではバイデン政権が主導する政策に沿った「増税」や「インフラ投資」がテーマに浮上する。ただ金利上昇をにらんだ取引が一大潮流になったのに比べるとまだ小粒な印象だ。
「金利は落ち着き、企業業績の改善による株高の道が開ける」。JPモルガンのストラテジスト、マルコ・コラノビッチ氏は先週の米CNBCでこう指摘した。昨年3月の相場底入れなど節目を当ててきた同氏が注目するのはファンダメンタルズだ。
金利上昇トレードの次の幕はいずれに開くにしても、第1幕の再現にはなりそうにない。(ニューヨーク=田口良成)