米中角逐 カギ握るTSMC 「技術リードは圧倒的」
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ソース: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0632K0W1A300C2000000/
2021/3/21 2:00 [有料会員限定]
世界の半導体競争は台湾のTSMCを中心に回っている=ロイター
【台北=中村裕】米中対立を軸に半導体競争が激しさを増している。従来の企業間競争とは異なり、国家間競争に発展してきたのが今の特徴だ。特に米国は台湾との連携を急ぐ。焦点になるのが、やはり世界をリードする台湾積体電路製造(TSMC)の動きだ。
台湾新竹市にあるTSMC本社では今、米アリゾナ州の新工場の建設準備が急ピッチで進み始めた。社内では1000人にも上る米国赴任者を募集する案内がかかり、総投資額120億ドル(約1兆3000億円)の超大型プロジェクトが一気に動き始めた。
米新工場は、トランプ政権が中国と対立するなか、強力に誘致して実現。昨年5月に華々しく発表された。ただ、TSMCが望んだものではなく「計画は大統領選次第で、立ち消えになるのでは」(関係者)と言われたほど、TSMCの動きも鈍かった。
だが、それがようやく2月、バイデン米大統領がトランプ政権の後を受け継ぎ、記者会見で半導体産業に370億ドル(約4兆円)の支援を検討するとの方針を示したことで、TSMCにも安心感が広がり、足元で今、準備が加速したというのが事の経緯だ。
特に今、米国の焦りは強い。インテルを筆頭に世界の半導体生産シェア(設計含む)で4割強の断トツの強さを見せるが、それでもTSMCの力を必要とする。それは「もはや今のインテルでは、米国の安全保障を守れないほどTSMCとの技術差ができた」(日系大手サプライヤー幹部)ためだ。
だが肝心のTSMCが米国一辺倒というとそうではない。最大市場はやはり中国。虎視眈々(たんたん)と商機を狙っている。さらに2月、日本に初の本格的な研究開発センターを茨城県つくば市に設立すると発表。日本の素材などの強みも上手に刈り取ろうとする、したたかな動きにも目を見張るものがある。
米国が華為技術(ファーウェイ)や中芯国際集成電路製造(SMIC)など中国企業に制裁を科したことで始まった、国家による半導体を巡る攻防。その行方は今後も、TSMCがカギを握っていることだけは間違いない。